診療案内
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眠っている時に呼吸停止または低呼吸の状態が引き起こされる病気です。10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が7時間の睡眠に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上あれば診断されます。
SASの患者さんの95%は『閉塞型睡眠時無呼吸』であり、舌の落ち込みや空気の通り道である気道が塞がれることにより起こります。咽頭部の軟らかい組織が内側に引き込まれて気道が狭くなります。ここに空気が通ると周囲の組織が振動します。これが『いびき』です。完全に塞がれると『無呼吸』となります。寝ている間の無呼吸は自分ではなかなか気づくことができないため、家族や友人から指摘され初めて検査や治療を受けることが多い疾患です。
この病気が深刻なのは、起きている時の私たちの日常生活に様々な影響を及ぼすこと、例えば「強い眠気」、「倦怠感」、「疲労感」、「集中力低下」などです。これらの症状を放置しておくことで、高血圧・心臓病(狭心症や心筋梗塞)・不整脈・脳卒中(脳梗塞や脳出血)・糖尿病などの疾患と密接に関係しています。また、この疾患は肥満の男性がかかる病気というイメージがあるかもしれませんが、太っていなくても、痩せていても、女性でもかかる可能性がある病気です。
睡眠1時間あたりの『無呼吸』と『低呼吸』の合計回数を無呼吸低呼吸指数=AHI(Apnea Hypopnea Index)と呼び、この指数によって重症度を分類します。なお、低呼吸とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3~4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指します。
軽症:5≦AHI<15
中等症:15≦AHI<30
重症:AHI≧30
上記のうち中等症~重症に関しては、経鼻的持続陽圧呼吸療法:CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)の適応となります。SASの診断と重症度を調べる検査が、後述する終夜睡眠ポリグラフ検査になります。軽症の場合は、生活習慣の改善や口腔内装置(マウスピース:スリープスプリント)作成などにより経過観察される場合もあります。
当院では睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関しても積極的に終夜睡眠ポリグラフ検査を施行し、経鼻的持続陽圧呼吸療法:CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)の導入も行っています。 睡眠時無呼吸症候群(SAS)を疑うときは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)セルフチェックシート(JESS問診票スクリーニング)を使用します。JESSは眠気のスコアであり、SASのスクリーニングではありませんが、JESSで11点以上と日中の眠気が強い方は、SASの診断検査を受けることをお勧めします。
以下の状況になったことが実際になくても、その状況になればどうなるかを想像してお答えください。(各項目で〇は1つだけ)
うとうとする可能性はほとんどない | うとうとする可能性は少しはある | うとうとする可能性は半々くらい | うとうとする可能性は高い | |
---|---|---|---|---|
1) すわって何かを読んでいるとき(新聞、雑誌、本、書類など) | 0 | 1 | 2 | 3 |
2) すわってテレビを見ているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
3) 会議、映画館、劇場などで静かにすわっているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
4) 乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
5) 午後に横になって、休息をとっているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
6) すわって人と話をしているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
7) 昼食をとった後(飲酒なし)、静かにすわっているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
8) すわって手紙や書類などを書いているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
手や指や鼻の下にセンサーをつけ、いびきや呼吸の状態、酸素飽和度からSASの可能性を調べる検査です。仕事や日常生活をそれほど心配せずにご自宅で出来る検査です。
この検査結果ですぐにCPAP治療へと進むこともありますが、より詳細な②の精密検査(Polysomnography:PSG検査)が必要になる場合もあります。
睡眠状態をトータルに評価する検査です。簡易検査の項目に加え、脳波や筋電図・眼球の動きなどを測定することで、睡眠の深さ(睡眠段階)、睡眠の分断化や覚醒反応の有無、睡眠構築、睡眠効率などを呼吸状態の詳細とあわせて、定量的に算出します。
当院ではSASに特化したZone株式会社と提携しているため、簡易検査(PG検査)はもちろん通常は1泊入院が必要な精密検査(PSG検査)もご自宅でできます。その他、当院では山脇酸素とも提携しております。
CPAPとは、鼻に装着したマスクから空気を送り込むことによって、ある一定の圧力を気道にかけることによって、狭くなっていたり塞がれている気道を広げ呼吸をしやすくするための方法です。CPAPは、15~20cm位の大きさであるCPAP機器本体と、あらかじめ設定した圧力で空気を送るチューブ、鼻に当てるマスクからなり、睡眠中はこれを装着します。圧力の大きさは、常に一定の圧力を保つ場合と、無呼吸の時にあわせて自動的に圧力が増す場合の2パターンに分かれますが、患者さんの病状に応じて設定されます。重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんにおいて、CPAP治療を行った場合と行わなかった場合とを比較した研究によると、CPAP治療を行った患者さんの方が明らかに長生きできたなど、多くの研究によって、睡眠時無呼吸症候群に対するCPAPの効果が証明されています。現在では中等~重症の閉塞型睡眠時無呼吸症候群の標準的治療法として広く用いられています。